夏は旅行のシーズンだが、犬猫総勢8匹ともなると、おいそれと旅行するわけにもいかない。しかし、浮き世の義理、どうしても行かなければならないときもある。そんなとき、ぶうは2番目に好きな人間とお留守番ということになる。猫たちはというと、不在を気にかけている風はなく留守番という意識もなさそうだ。 |
あくびするぶう
さて、最初は旅行に出かけたと分からないぶうは、一番好きな人間が帰ってくる時刻をすぎると玄関のほうが気になる。そして、できるだけ起きていようとする。 でも、いつまでも起きてはいられない。明かりを消して2番目に好きな人間と眠りにつくことになる。 |
外の様子をうかがうぶう
ぶうが2番目に好きな人間は、夜中にふと目を覚ました。横で寝ていたぶうがいない。上半身を起こしてぶうを探す。ああやっぱり。ぶうは、玄関のほうに移動して外の様子をうかがっていた。ぶう、と小さく声をかけると、ぶうは人間のほうへまた歩いてくる。そして、人間のそばでくるりと向きを変え、玄関のほうへ頭を向けてぺたんとうずくまった。人間はぶうの背中を軽くなでて、また眠りについた。 さて、次の日も一番好きな人間は帰ってこず、それでもぶうは待ちに待って前の日と同じことを繰り返す。そしてまた次の日。ぶうは少々機嫌が悪くなる。 |
ぶうの喜びの表現はこれしかない。
ようやくぶうの一番好きな人間が帰ってきた。そうなるとぶうはその人間に腹を立てていたことなどすっかり忘れてしまう。いつもにもまして大喜びし、必死でズボンのすそをかむ。 |
不機嫌なぶう
ケッサクだったのはそのあとだ。ぶうは突然一番好きな人間のそばから離れてヨソヨソしい態度を取り始め、二番目に好きな人間にまとわりつく。一番好きな人間が隣の部屋に行くときも、ついていきかけてやめる。様子をうかがって、一番好きな人間が戻ってこようとすると、あわてて二番目に好きな人間の膝に乗ってくる。どうも、一番好きな人間を見て喜びに我を忘れたものの、興奮が冷めてすねていたことを思い出したらしい。 眠りにつく段になっても、一番好きな人間のそばに行こうとしない。ちらちらと様子をうかがうところからしても、ムリをしているのはみえみえだ。さあ、ぶう、行っておあげ、と二番目に好きな人間は、一番好きな人間のところへぶうを抱えて運んだ。そうすると、ぶうは、んんぶー、と大きな鼻息を吐き出して、仕方ないなというふうにもったいぶって一番好きな人間の腕に顔をうずめたのだった。最初からそうしたかったくせに。 |