1999年:秋


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 秋が来た。1999年、10月。大阪は真夏日が何度もあった。「観測史上初」というのもなんだか慣れっこになってしまった。地球は狂いはじめているのだろうか。
 ようやく来た秋がしみじみとうれしい。夏は終わった。今年も「その夏」ではなかった。ぶうは12度目の秋を迎えることができた。
 ぶうは本当に足が弱くなってしまった。ほんの少しの段差も降りることができない。5分と続けて歩くことができない。それでも、散歩というと大喜びで飛びついてくるのだけれど。ほとんど抱っこされて行く散歩でもぶうは大好きだ。いつものコースをいつものように動いて行くだけでも、外の空気、外の匂いがぶうには嬉しい。

 夜、眠りにつくとき、ぶうがふとんにごそごそと潜り込んでくる。1番好きな人間と2番目に好きな人間のふとんをぶうは何度も往復する。
 例によって人間の腕にアゴをむにむにと押しつけて、安心したようにぶうは高イビキだ。その温もりの確かさとはかなさに、なぜだか敬虔な気持ちになる。ぶうの与えてくれるものの多さと、ぶうのためにしてやれることの少なさを思いながら。

 たぶん、ぶうと一緒にいられる時間はそんなに残されていない。

 「その夏」が来たとき‥‥。
ぶうのいない世界をわたしは許すことができるだろうか。




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